一般建設業許可を取得するためには、確認しなければならないことがたくさんあります。
しかし、初めて建設業許可を取得される方にとっては、何から手を付ければ良いのかわからないですし、調べたとしても専門用語はわかりにくく、申請するまでに余分な時間がかかってしまいます。
そのような方のために、このページでは一般建設業許可を取得するための第一歩として、まず始めに取り組むべき4つの事項をお伝えします。
- 一般建設業許可が本当に必要なのか判断する
- 取得したい建設業許可の種類を決める
- 許可の要件をクリアしているのか確認する
- 建設業許可申請の流れを理解する
是非参考にしてください。
1.一般建設業許可が本当に必要なのか判断する
一般建設業許可は、建設業許可というくくりの中の一部分です。まずは、大もとになる建設業許可は何のために必要となるのかを確認してください。そして、一般建設業許可となるか、特定建設業許可となるか判断していただきます。
1-1.建設業許可は何のために必要か
建設業許可は500万円以上の工事を請け負う場合に必要となります。
建築一式工事(建築確認をともなう新築、増改築工事)は例外となり、1500万円以上の工事を請け負う場合に必要となります。ただし、1500万円以上でも延べ床面積が150㎡未満の木造住宅工事の場合には許可は必要ありません。
この500万円(もしくは1500万円)という金額には、材料費や消費税を含めた金額での判断となります。
また、元請・下請といった工事を請け負う立場や、個人事業主・会社といった事業形態に関係なく、500万円(もしくは1500万円)以上の工事を請け負う場合には建設業許可が必要となります。
1-2.一般建設業と特定建設業について
建設業許可は、一般建設業許可と特定建設業許可に分かれます。この2つの違いは、元請工事を下請に出す際の金額により判断します。
元請工事の内、下請に出す工事の金額が総額で3000万円以上(建築一式工事は4500万円以上)となる場合は、特定建設業の許可が必要となります。それ以外の場合は一般建設業許可となります。
つまり、元請として工事を請けていない会社や、下請に出す工事の金額が3000万円未満となる会社は一般建設業許可となります。
特定建設業許可が必要となるのはいわゆるゼネコンとなり、世の中の多くの会社が一般建設業許可となります。
一般建設業許可があれば請負金額に制限はありません
注意していただきたいのは、一般か特定かの判断は、元請工事を下請に出す際の金額となります。制限がかかるのは下請に発注する工事の金額です。
つまり、元請・下請に関わらず工事を請ける側の立場としては、特定・一般のどちらかの建設業許可があれば、制限なく工事を請けることができます。500万円以上は当然のこと、3000万円以上でも1億円以上でも問題ありません。
2.取得したい建設業許可の種類を決める
一般建設業許可が必要と確認できたら、次は取得したい建設業許可の種類を確定させましょう。
建設業許可の種類において、一般建設業はその一部分でしかありません。許可の種類を決定するためには、知事許可か大臣許可か、建設業28業種の内どの業種の許可が必要かを決めなければなりません。
2-1.知事許可と大臣許可
東京都知事許可や国土交通大臣許可のように、建設業許可は知事許可と大臣許可に分かれます。
この違いは、営業所の数とその所在地となります。
営業所が1カ所しかなければ、その所在地を管轄する地域の知事許可となります。営業所が複数あり、かつその所在地が複数の都道府県に分かれる場合は国土交通大臣許可となります。
営業所とは、建設業に関する業務(建設工事に関する契約締結や見積り作成などの業務)を行っている事務所を指します。よって、登記だけしている本店や支店、作業所や資材置場は営業所となります。
2-2.建設業28業種
建設業とひとくくりで言っても、許可を取るためには28の業種に分けて考えなければなりません。なぜなら、必要となる業種ごとに建設業許可が必要となるからです。
- 土木工事業
- 建築工事業
- 大工工事業
- 左官工事業
- とび・土工工事業
- 石工事業
- 屋根工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- タイル・レンガ工事業
- 鋼構造物工事業
- 鉄筋工事業
- 舗装工事業
- しゅんせつ工事業
- 板金工事業
- ガラス工事業
- 塗装工事業
- 防水工事業
- 内装仕上工事業
- 機械器具設置工事業
- 熱絶縁工事業
- 電気通信工事業
- 造園工事業
- さく井工事業
- 建具工事業
- 水道施設工事業
- 消防施設工事業
- 清掃施設工事業
必要となる業種の判断がつかなければ、建設業28業種を詳しく解説!これを見れば必要な業種がわかりますにて詳しく説明しておりますので参考にしてください。
複数の業種の許可を一度に取得することができます
建設業許可において取得できる業種の数に制限はありません。要件さえ満たせば複数の業種を一度に取得することができます。許可取得後、業種を追加することもできますが、最低でも5万円の費用がかかりますので、出来る事なら一度にまとめて取得した方がお得です。
業種ごとに一般建設業か特定建設業かを選択します
例えば、建築一式工事と大工工事の業種で許可を取得したい場合、建築一式工事は特定建設業、大工工事は一般建設業とすることができます。
2-3.必要となる建設業許可の種類はわかりましたか?
ここまでお読みいただいた方は、取得しなければならない許可の種類がつかめてきたのではないでしょうか?きっと多くの方が、一般建設業許可かつ知事許可が必要になるかと思います。
そこでこの後、一般建設業許可かつ知事許可を取得するための要件について説明していきます。業種については○○工業業として説明いたしますので、ご自身が取得されたい業種に置き換えて考えてください。
3.許可の要件をクリアしているのか確認する
一般建設業許可かつ知事許可で、○○工業業の許可を取るための要件についてお伝えいたします。
重要な要件は3つあり、経営業務の管理責任者、専任技術者、財産要件の3つとなります。この3つをクリアできれば許可取得が十分期待できます。
3-1.経営業務の管理責任者
まず、経営業務の管理責任者の要件についてです。
これは簡単に言うと、経営者としての経験が十分にあるのか、という要件です。
経営者とは、会社の役員や、個人事業主のことを指します。
どんな人がこの要件をクリアしているかと言うと、
- 5年以上、○○工業業を行う会社の役員(もしくは個人事業主)であった方
- 7年以上、○○工業業に関わらず何かしらの建設業を行う会社の役員(もしくは個人事業主)であった方
となります。
つまり、5年以上7年未満の年数であれば、許可を取りたい業種の経営経験が必要です。7年以上であれば、業種は関係なく、何かしらの建設業を行っていれば良いのです。
さらに、こうした経営者であったことや、建設業を行っていたことを、書面により証明しなければなりません。経営者であったことは、会社役員の場合は登記簿謄本を、個人事業主の場合は確定申告書により証明するのが一般的です。建設業を行っていたことは、建設業許可を持っていた場合は許可通知書を、持っていなければ工事の契約書や注文書、請求書等を提示して証明することになります。
また、こうした経営経験がある方が、申請する会社に常勤の役員として勤務していることも証明しなければなりません。証明方法として、役員として登記された登記簿謄本と、社会保険の加入が一般的です。
経営業務の管理責任者の要件がクリアできないために、建設業許可の取得を諦める方が多いです。昔に比べて、建設業許可の審査は非常に厳しくなっております。要件が満たせないからと言って、名義貸し等をしようとする方がいますが、そういったことは通じないのでご注意ください。
3-2.専任技術者
次に、専任技術者の要件についてです。
これは簡単に言うと、専門的な知識や経験が十分にあるのか、という要件です。
どんな人がこの要件をクリアしているかと言うと、
- 業種ごとに定められた資格を所持している方
- 10年以上、○○工業業を行う会社の従業員であった方
となります。
つまり、資格者もしくは10年以上の実務経験者がいるのかが問題となります。
資格については業種ごとに異なり、詳しくは専任技術者をご覧ください。
実務経験については、建設業を行っていたことや、従業員であったことを、書面により証明しなければなりません。建設業を行っていたことは、建設業許可を持っていた場合は許可通知書を、持っていなければ工事の契約書や注文書、請求書等を提示して証明することになります。従業員であったことは、社会保険の加入記録により証明するのが一般的です。
また、専任技術者も申請する会社に常勤で勤務していることを証明しなければなりません。専任技術者については従業員であればよく役員である必要はありません。もちろん役員であっても問題ありません。証明方法としては社会保険の加入が一般的です。
3-3.財産要件
続いて、財産要件についてです。
これは、お金を500万円以上用意できるのか、という要件です。
要件をクリアしているかは、銀行口座の残高が500万円以上ある状態で、銀行からの残高証明書の発行により証明します。
もしくは既に決算が終わっている会社であれば、決算書の貸借対照表における純資産の合計額が500万円以上となっていれば、それだけで要件クリアとなります。
3-4.その他の要件
その他の要件として、誠実性の要件、欠格要件というものがあります。
ざっくり言うと、申請する会社の役員の中に暴力団関係者や破産者・法律違反を犯した人がいないか、もしくは過去に建設業法違反などを犯していないか、といった要件となります。
特に思い当たるものがなければ、要件をクリアしているとお考えいただいて問題ありません。
4.建設業許可申請の流れを理解する
要件を確認していただきクリアの見込みがたてば、申請に向けた準備となります。
申請から取得までの流れや、必要書類、費用、許可取得までの期間についてお伝えします。
4-1.申請から許可取得までの流れ
流れとしては簡単で、①申請書類の提出、②審査、③許可通知の3つのみとなります。ただし、申請書類を作成するのにかなりの手間がかかります。
4-2.申請のための必要書類
建設業許可を申請するためには、かなり多くの書類を用意しなければなりません。詳しくは初めて建設業許可を申請する人が必要となる書類のまとめをご覧ください。ご自身で準備する場合には、早くても1週間は必要になるとお考えください。
4-3.建設業許可取得にかかる費用
許可取得までにかかる費用としては、国におさめなければならない費用と、行政書士に依頼した場合の費用となります。この2つ以外には、登記簿謄本等を取得する際の実費として数千円かかる程度です。
国におさめなければならない費用
ご自身で申請を行ったとしても、行政書士に依頼したとしても、必ずかかる費用となります。
許可の種類 | 国におさめる費用 | |
---|---|---|
一般または特定の一方 | 一般と特定の両方申請 | |
知事許可 | 9万円 | 18万円 |
大臣許可 | 15万円 | 30万円 |
知事許可の場合は9万円、大臣許可の場合は15万円となります。この金額は、一般建設業と特定建設業それぞれで発生します。例えば、知事許可にて建築一式工事と大工工事の業種を取得したい場合、建築一式工事は特定建設業、大工工事は一般建設業とする場合は18万円が必要となります。両方とも特定建設業、もしくは一般建設業とする場合は9万円となります。
行政書士に依頼した場合の費用
行政書士への報酬として相場は12万円となります。この金額は、インターネットにて建設業許可申請といったキーワードで表示される行政書士10社の金額の平均です。ネット集客をしていない行政書士はさらに高いと思われます。
地域 | 金額 | |
---|---|---|
A社 | 東京都 | 99,800 |
B社 | 富山県 | 140,400 |
C社 | 千葉県 | 120,000 |
D社 | 東京都 | 140,400 |
E社 | 大阪府 | 140,000 |
F社 | 福岡県 | 130,000 |
G社 | 東京都 | 89,800 |
H社 | 東京都 | 84,000 |
I社 | 東京都 | 162,000 |
J社 | 東京都 | 86,400 |
平均 | 119,280 |
4-4.申請から取得までの期間
申請するとそこから審査期間が始まります。審査が終わると許可通知書が送付され、許可取得となります。
この審査期間は、知事許可の場合は1ヶ月、大臣許可の場合は3ヶ月が目安となります。しかし、知事許可の場合は地域によってはこれ以上かかる場合があります。参考に、知事許可の審査期間にて各地域で公表している審査期間をまとめてますのでご確認ください。
6.まとめ
一般建設業許可を取得されたい方が、まず始めに取り組むべき4つの事項をお伝えしました。
- 一般建設業許可が本当に必要なのか判断する
- 取得したい建設業許可の種類を決める
- 許可の要件をクリアしているのか確認する
- 建設業許可申請の流れを理解する
この4点となります。
一般建設業許可は、500万円以上の工事を請け負う場合に必要となります。元請工事において、3000万円以上の工事を下請に発注することがあり得るなら、一般建設業ではなく特定建設業許可が必要となります。
必要となる建設業許可を決めるために、知事許可と大臣許可はどちらになるか、必要となる建設業種を何かを選択しなければいけません。
そして、一般建設業許可を取得するための要件となる、経営業務の管理責任者、専任技術者、財産要件をクリアしなければなりません。
許可を取得するためには最低9万円が必要となり、申請から取得まで1ヶ月かかります。