国土交通大臣許可

建設業許可には知事許可と大臣許可があります。
この違いは営業所によるものです。

よく全国で工事を行いたいから大臣許可が欲しい、
という方がいますが、知事許可でも全国の工事を行うことができます。

大臣許可が欲しいからといっても、そもそも大臣許可を取得する必要があるのか、よく確認する必要があります。

また、大臣許可を取るためには要件があり、それをクリアできなければ先に進めません。

知事許可に比べて、大臣許可はお金や時間といったコストも余計にかかります。

そこでこのページでは、

  • 大臣許可はどのような場合に必要なのか
  • 大臣許可になることでのメリットとデメリット
  • 大臣許可を取得するための要件
  • 大臣許可の申請

の4点についてお伝えします。

大臣許可についての理解を深め、許可取得をスムーズに行っていただければと思います。

1.大臣許可はどのような場合に必要なのか

建設業許可は、国土交通大臣許可と都道府県知事許可に分かれます。
この大臣許可と知事許可の違いが何なのか、詳しく説明いたします。

1-1.営業所が複数の都道府県に設置されている場合に必要

大臣許可は、営業所が複数の都道府県に設置されている場合にのみ必要となります。
重要なポイントとして、「営業所」と「複数の都道府県」となります。

知事許可と大臣許可

営業所とは

建設業の営業を常時行う本店や支店、事務所のことです。建設業の営業とは、建設工事に関わる見積りや入札、契約締結、金銭の受理支払などの業務を指します。こういった営業を直接行っていなくても、他の営業所に対して指導、監督により関与していれば営業所とみなされます。

単に登記されているだけで建設業としての営業を行っていない本店や支店、資材置場、事務連絡所、工事事務所、作業所などは営業所となりません。

複数の都道府県に設置とは

2つ以上の都道府県に営業所が設置されている場合は大臣許可となりますが、複数の営業所があるからといっても、それらの所在地が一つの都道府県内におさまる場合は、大臣許可ではなく、知事許可となります。

大臣許可のイメージ
大臣許可のイメージ

知事許可のイメージ
知事許可のイメージ

1-2.大臣許可と知事許可に営業所以外の違いはありません

大臣許可となるかは営業所の所在地によってのみ判断されます。よって、大臣許可と知事許可で、受注できる工事の金額や、建設工事を施工する現場の区域などの違いはありません。

例えば、東京都知事許可の場合、東京都内の工事しかできないわけではなく、全国どこの現場でも施工することができます。

※建設業許可には下請けに出す工事の金額により、一般建設業と特定建設業の許可に分かれますが、その点については、一般建設業と特定建設業をご覧ください。

2.大臣許可になることでのメリットとデメリット

大臣許可と知事許可の判断は営業所による違いのみですが、大臣許可となることでいくつかのメリットやデメリットが考えられます。

2-1.大臣許可のメリット(知事許可のデメリット)

大臣許可を取得することでのメリットとして以下が考えられます。知事許可の会社が大臣許可とならない場合のデメリットにもなり得ます。

事業規模が拡大できる

知事許可、大臣許可を問わず全国どこの工事でも施工することができますが、営業所と現場が離れてしまうと工事を受注できる可能性が下がってしまいます。東京都にのみ営業所がある会社が、関西や九州などの工事を受注するためには、その地域に営業所があった方が良いのは当然のことでしょう。

社会的信頼が高まる

大臣許可は知事許可の上級許可ではありませんが、多くの方がそのように思っているのも事実です。「国土交通大臣許可」と付くことで、取引先や金融機関からの印象が良くなる可能性も十分考えられます。

コンプライアンスを遵守できる

大臣許可を取得するには手間や費用がかかります。そのため、実態としては大臣許可でなければならないのに知事許可のままである会社が見受けられます。建設業界は年々、コンプライアンスが厳しくなってきていますので、実態と合わない許可のままでいることはいずれリスクとなる可能性があります。

入札において有利となる場合がある

これは地域によっても異なりますが、自治体によっては入札において、その地域に営業所がある会社や、地域の住民を積極的に雇用している会社を優遇する場合があります。

2-2.大臣許可のデメリット(知事許可のメリット)

大臣許可を取得することのデメリットとして以下が考えられます。知事許可の会社が大臣許可とならない場合のメリットにもなります。

費用が余分にかかる

大臣許可を取得するためには、建設業許可を全く持っていない会社は新規申請となりますし、既に知事許可を持っていたとしても許可換え新規という申請が必要となります。
どちらの場合も、国に収める登録免許税として15万円がかかり、さらに行政書士に依頼するとその費用として10万円以上が発生します。知事許可への新規申請であれば国におさめる費用は9万円で済みます。

取得までに時間がかかる

大臣許可の場合、新規申請、許可換え新規申請ともに、申請から取得まで約3ヶ月の審査期間がかかります。知事許可の場合は1ヶ月程度で取得ができますので、初めて建設業許可を取得する新規申請の会社にとっては、2ヶ月の差は大きなロスになってしまいます。
許可換え新規の場合には、知事許可から大臣許可への切り換えに際して、許可取得期間に空白無く切り換わります。

営業所、使用人、専任技術者の設置が必要

大臣許可を取得するための大前提として、営業所が設置されていなければなりません。また、後述しますが、その営業所には令3条使用人(営業所の決裁権を持つ支店長など)や、専任技術者を設置しなければなりません。社内にそういった人材がいなければ、新たに雇用しなければなりませんので、この点でもコストがかかります。

営業所を廃止した場合のリスクがある

大臣許可は営業所が複数の都道府県にあることが条件となります。もし、専任の技術者が欠けるなどして営業所としての要件を維持できなければ、再度知事許可に変更しなければなりません。この時も再び許可換え新規申請が必要で、書類作成の手間や、国におさめる費用となる手数料9万円、行政書士への費用10万円以上が発生します。

3.大臣許可を取得するための要件

これまでの説明をふまえ、大臣許可の取得を決意された方は、続いて大臣許可を取得するための要件を確認してください。新規申請、許可換え申請のどちらも、経営業務の管理責任者や、専任技術者、財産要件など、重要な要件について知事許可との違いはありません。

しかし、大臣許可特有の要件として、営業所が複数あることと、それぞれの営業所に令3条使用人や専任技術者の設置が必要となります。

3-1.営業所の設置

大臣許可の大前提として、複数の都道府県に営業所がなければなりません。
営業所は、建設工事に関わる見積りや入札、契約締結などの業務を行っている本店や支店、事務所のことを指します。こうした業務を行っている以外にも、営業所として認められるかは、次の要件を満たす必要があります。

  1. 電話、机、各種事務台帳などを揃え、居住部分とは明確に区分された事務室が設けられていること
  2. 見積りや入札、契約締結などの業務に関する権限が付与された者が常勤していること
  3. 専任技術者が常勤していること

1.については営業所の外部や内部の写真を撮ることで証明します。また、営業所の所有状況を確認するために、自社所有の場合は建物の登記簿謄本など、賃貸の場合は賃貸借契約書などの提示を求められます。

2.や3.については以下で説明いたします。

3-2.営業所に政令の使用人を設置

営業所として認められるためには、営業所に建設業法施行令第3条に規定する使用人(令3条使用人)が常勤で勤務していることが必要です。令3条使用人とは、簡単に言うと、支店長や営業所長のことで、その営業所における決裁者となります。

令3条使用人になるための要件

経営業務の管理責任者や専任技術者のように、資格や経験が必要となるわけではないので、そんなに難しくはありませんが、令3条使用人になるためには以下の要件があります。

  • 建設工事に関わる見積りや契約締結などができる権限が与えられていること
  • 権限が与えられていることを会社の代表者からの委任状を作り証明します

  • 営業所に常勤で勤務していること
  • 常勤で勤務していることを、現住所を確認するための住民票と、事業所名の記載がある健康保険者証により証明します

  • 欠格要件に該当していないこと
  • 成年被後見人や破産者、過去に不正な手段により許可を取得した人、法律違反を犯した人は令3条使用人になれません

3-3.営業所ごとに専任技術者を設置

大臣許可を取る上で一番難しいのがこの専任技術者となります。
それぞれの営業所に専任技術者の要件を満たす人を設置しなければなりませんので、大臣許可を取得する上では、最低でも、本店と営業所で専任技術者が2人必要となります。

専任技術者の要件としては国家資格者や実務経験者となりますが、詳しくは専任技術者をご覧ください。

営業所で営む建設業は専任技術者によって決まります

営業所を新たに設置した際、その営業所で営むことができる建設業は、専任技術者となる方が持つ国家資格や、実務経験の内容によって決まります。

例えば、建築一式工事、内装仕上工事、とび・土工工事の3つの業種で東京都知事の一般建設業許可を受けている会社があるとします。また、専任技術者として、建築一式と内装仕上については一級建築士のAさんが、どび・土工については実務経験でBさんが担っているとします。

新たに神奈川県に営業所を設置し、大臣許可を取得することになりました。

AさんとBさんしか専任技術者の要件を満たせる人がいない場合は、東京の本店と神奈川の営業所では、それぞれのどちらかを配置しなければなりません。

つまり、東京の本店の専任技術者をAさんとすれば、この本店では建築一式工事、内装仕上工事の2つができます。一方、神奈川の営業所では専任技術者がBさんとなり、とび・土工工事のみができます。

このような内容であれば大臣許可は取得できますが、実務上、営業所によって行える業種が限られてしまうのは良くありません。出来る事なら、それぞれの営業所で同様の業種が行えるよう、専任技術者を設置した方が良いでしょう。

3-5.その他の要件

基本的に、その他の要件としては知事許可と同じですが、地域によって違いがあります。
関東地方整備局に確認
例えば、財産要件として500万円以上の資産が必要となりますが(一般建設業の場合)、知事許可の場合では決算書の純資産の金額もしくは残高証明により証明します。しかし、大臣許可の場合は、これに加えて損失があまりに巨額にないことが要件としてあります。

4.大臣許可の申請

大臣許可の要件をクリアする見込みがたてば、いよいよ申請となります。

4-1.申請書類の作成

基本的には知事許可の申請書類と同じです。ただし、営業所や令3条使用人、専任技術者に関する書類については、記載事項が増えたり、追加で必要となるものもあります。

大抵の地域で、審査機関となる地方整備局が定める確認資料の提出が求められます。
詳しくは、建設業許可の申請先一覧にて、管轄となり地方整備局のページより確認してください。

4-2.作成部数

大臣許可の申請においては、申請書類の作成部数として正本1部、副本3部の計4部は用意してください。これは本店と営業所が1カ所の場合となりますので、営業所が複数になる場合はそれ以上必要となります。申請前に管轄となる地方整備局にて確認してください。

  • 国土交通大臣申請用(正本)
  • 本店のある都道府県への申請用
  • 営業所のある都道府県への申請用
  • 申請者の控え

申請書類とは別に、地方整備局が提示している確認資料がありますが、それは地方整備局のみへの提出となりますので1部の用意で足ります。

4-3.申請のための費用

大臣許可を申請するためには、国に登録免許税を納めなければなりません。金額については以下となります。これはご自身で申請をしたとしても必ず必要となる費用です。

申請区分 免許税
一般または特定の一方 一般と特定の両方申請
新規 15万円 30万円
許可換え新規 15万円 30万円

※建設業許可を申請する際には、要件を満たしていれば複数の業種をまとめて申請することができます。例えば建築一式、内装仕上、とび・土工の3つの業種を申請する場合、3つ全て一般建設業許可として取得する場合は登録免許税は15万円となりますが、建築一式は特定建設業、その他は一般建設業として申請する場合は登録免許税は30万円となります。

行政書士が代行する場合はさらにそのための費用が発生します。建設業許可申請といったキーワードで表示される行政書士10社の大臣許可申請の金額をまとめましたので参考にしてください。

  地域 金額
A社 東京都 150,000
B社 富山県 151,200
C社 千葉県 180,000
D社 東京都 162,000
E社 大阪府 190,000
F社 福岡県 180,000
G社 東京都 149,800
H社 東京都 126,000
I社 東京都 194,400
J社 東京都 118,800
平均 160,220

4-4.申請先

大臣許可の申請は、本店を管轄する担当課(都庁や県庁の建設業課、土木事務所)を経由し、本店を管轄する地方整備局(国土交通大臣)へ提出となります。本店を管轄する担当課は、知事許可の時の申請先と同じです。

申請から許可取得までの流れ

大臣許可申請の流れ

①申請書類について本店を管轄する担当課に提出します。
②担当課の受付後、申請書類の副本が返却されます。
③本店を管轄する地方整備局に確認資料を送付します。
④担当課から地方整備局に申請書の正本が送付されます。
⑤地方整備局にて審査となります。審査期間は3カ月程度となります。
⑥審査終了後、許可通知書が申請者に送付されます。
⑦申請書類の副本と許可通知書を、本店以外の営業所のある都道府県の担当課へ送付します。

5.まとめ

国土交通大臣許可について詳しくお伝えしました。

  • 大臣許可はどのような場合に必要なのか
  • 営業所が複数の都道府県に設置されている場合にのみ大臣許可が必要となります。工事の施工区域に違いはありません。

  • 大臣許可になることでのメリットとデメリット
  • メリットとしては事業規模や社会的信頼が高まること、デメリットとしてはコストが余分にかかることが挙げられます。

  • 大臣許可を取得するための要件
  • 基本的には知事許可と変わりませんが、営業所の設置にともなう令3条使用人や専任技術者の設置が必要となります。

  • 大臣許可の申請
  • 大臣許可は本店を管轄する担当課を経由して、地方整備局への申請となります。

多くの会社が知事許可となり、大臣許可についての情報はあまりまとまっていませんので、このページをよく確認して大臣許可についての理解を深めてください。

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