専任技術者

建設業を営む人であれば、○○技術者といった言葉は良く耳にするかと思います。専任技術者という言葉も聞いたことがあるのではないでしょうか。

専任技術者は、建設業許可を取得するために必ず必要です。
専任技術者の要件を満たす人がいなければ許可を取得することができません。また、許可を取得した後も、建設業法に則った営業を行う上で、専任技術者のことをよく理解していなければなりません。

行政の手引きや、インターネット上のページでは、部分部分については書かれていますが、専任技術者について一まとめにわかりやすくまとまっているものはありません。

そこで本ページにて、どんな人が要件を満たすのか、専任技術者になるとどんな役割があるのかなど、専任技術者のことをわかりやすくまとめております。

是非参考にしてください!

目次

1.専任技術者とは
1-1.専任技術者は建設業許可を取得するための要件の一つです
1-2.専任技術者になるとどんな役割があるのか

2.専任技術者にはどんな人がなれるのか
2-1.要件の全体像
2-2.建設業許可の種類に応じた専任技術者の要件
2-3.営業所に専任で勤務
2-4.要件クリアを証明するための資料
2-5.実務経験の緩和措置

1.専任技術者とは

建設業に関して専門的な知識や経験を持つ人のことです。

建設業許可は行政からのお済付きのようなものですから、許可を与えるためには一定の建設技術があることが求められます。この技術が備わっていることを専任技術者によって証明するのです。

1-1.専任技術者は建設業許可の要件の一つです

専任技術者がいなければ建設業許可を取得することはできません。また、もし許可取得後に専任技術者がいなくなれば、代わりの方がいない限り許可を維持することができません。

専任技術者は建設業許可を取得、維持するために必須の要件となります。

専任技術者は、建設業許可の種類や建設業の業種に応じて一定の資格や経験を持つ人がなることができます。さらに、許可を受けようとする営業所ごとに配置されていなければいけません。

本店と支店の2つの営業所があり、本店では大工工事と電気工事の建設業許可を、支店では大工工事のみの許可を取得するには
本店において、大工工事の要件を満たす専任技術者と、電気工事の要件を満たす専任技術者が必要(一人で両方の要件を満たす人がいればそれで可)
支店において、大工工事の要件を満たす専任技術者が必要(本店とは別の人でないと不可)

1-2.専任技術者になるとどんな役割があるのか

専任技術者になれるのは、資格や経験があるなど、取得する建設業種に関して一定水準以上の専門知識を持つ人だけです。

専任技術者は、各営業所における技術的な責任者となります。知識と経験を活かして営業所を統括し、建設工事に関する見積や請負契約の締結、履行を適正に実施しなければなりません。

2.専任技術者にはどんな人がなれるのか

専任技術者になるためには、一定の資格や経験がなければいけません。
一定の資格や経験は、建設業の種類(一般と特定)や、建設業種ごとに定められています。
さらに、各営業所に専任として(常勤で)勤務していなければいけません。

2-1.専任技術者になるための要件の全体像

専任技術者の要件として何が求められるかは、一般建設業か特定建設業かの許可の種類や、建設業の業種に応じて異なります。また、許可を受けようとする営業所ごとに配置されていなければなりません。さらに、こうした要件を満たしていることを証明するための資料も用意できなければなりません。

※許可の種類や業種、営業所が定まっていない方は、必要な建設業許可の種類を7分で判断するための3つの質問をご覧になり、必要な建設業許可の内容を決めてください。

2-2.建設業許可の種類に応じた専任技術者の要件

発注者から元請として工事を請け、さらにその工事について総額3000万円以上(建築一式工事の場合は4500万円以上)を下請に出す場合には、特定建設業の許可が必要となります。逆に、元請工事を下請に出す金額が3000万円未満(建築一式工事は4500万円未満)の場合や、元請として工事を請けることが無い会社は一般建設業の許可となります。

2-2-1.一般建設業における専任技術者の要件

以下の3つのうち、どれかをクリアしている人が必要となります。

  • ①資格
  • 許可を受けようとする建設業種に応じて定められた国家資格等を有する者

  • ②実務経験
  • 許可を受けようとする建設業種について10年以上の実務経験を有する者

  • ③学歴+実務経験
  • 許可を受けようとする建設業種に応じて定められた学歴を有し、一定(3年以上もしくは5年以上)の実務経験を有する者

実務経験とは
許可を受けようとする建設業種に関する技術上の全ての職務経験となります。
具体的に言うと、以下のような経験のことを指します。

  • 建設工事の施工を指揮、監督した経験
  • 建設工事の施工に実際に携わった経験
  • 土工、見習いに従事した経験
  • 建設工事の発注にあたって設計技術者として設計に従事した経験
  • 建設工事の発注にあたって現場監督技術者として監督に従事した経験

※単なる工事現場の雑務や事務の経験は実務経験とは認められません。

2-2-2.特定建設業における専任技術者の要件

特定建設業については、より高度な資格や経験が必要となり、要件が厳しくなっています。
以下の2つのうち、どれかをクリアしている人が必要となります。

  • ①資格
  • 許可を受けようとする建設業種に応じて定められた国家資格等を有する者

  • ②一般建設業の要件クリア+指導監督的経験
  • 一般建設業の要件(①~③のどれか)をクリアし、かつ、許可を受けようとする建設業種において、元請として4500万円以上の工事を2年以上指導監督した経験を有する者
    ※指定建設業は除く

指導監督的経験とは
建設工事の設計、施工の全般にわたって工事現場主任や現場監督者のような立場で工事の技術面を総合的に指導監督した経験となります。
指定建設業とは
以下の7業種が指定建設業として定められています。指定建設業においては1級の国家資格等の有資格者でなければ専任技術者になることができません。

  • 土木工事業
  • 建築工事業
  • 電気工事業
  • 管工事業
  • 鋼構造物工事業
  • 舗装工事業
  • 造園工事業

2-3.専任技術者は営業所に専任でなければいけない

「専任」と付いているように、専任技術者は営業所ごとに専任でなければなりません。
「専任」とは、営業所に常勤で勤務し、その営業所の技術者として職務に従事することを指します。

よって、以下のような人は営業所に専任となっていると言えません

  • 現住所と営業所とが著しく遠距離にあり、一般的に考えて通勤することができない
  • パートやアルバイト、契約社員など有期で雇用契約を結んでいる
  • 他の会社で常勤の役員や従業員となっている
  • 他の会社の専任技術者や主任技術者、監理技術者となっている
  • 他の会社の管理建築士や宅地建物取引主任者となっている
  • その方自身が個人事業主として事業を行っている

※同一法人の同一営業所内であれば、専任技術者となる人が、管理建築士や宅地建物取引主任者を兼ねることは可能です。

※経営業務の管理責任者と専任技術者を同一の人が兼ねることは可能です。

※同一営業所内においては、複数の建設業種の専任技術者となることができますが、他の営業所の専任技術者を兼ねることはできません。

営業所が2つ(本店と支店)あり、本店の業種は大工工事ととび土工工事の2つ、支店の業種は大工工事のみの場合
本店における専任技術者は、2つの業種で要件を満たしていれば1人で問題無いが、その人が支店の専任技術者を兼ねることはできない(2つの営業所に常勤で勤務していることはあり得ないため)

2-4.要件をクリアしていることを証明するための資料

専任技術者の要件は、資格で満たすことが望ましいです。
なぜなら、建設業許可の申請において要件を満たしているか否かは全て書面により証明しなければならず、資格であれば資格者証等を提出するだけとなります。
しかし実務経験を証明するとなると、請負工事の契約書や、経験を積んだ会社に在籍していたことを証明する資料等、用意しなければいけない書類が多岐に渡ります。こうした書類を集めることは苦労することでしょう。とはいっても、資格が無ければ実務経験で証明するしかありませんので、何とか必要となる書類を用意しなければなりません。

※必要書類については申請する地域に応じて異なる場合がありますので、事前に管轄の都庁や県庁にお確かめください。

資格があることの証明

国家資格等の資格により専任技術者の要件を満たす場合は、資格証明書の原本を提示し、コピーを提出することで、その証明となります。

学歴があることの証明

許可を受けようとする業種に応じて指定された学歴がある場合は、卒業証明書の原本を提示し、コピーを提出することで、その証明となります。

実務経験の証明

前提として、実務経験は過去のどのタイミングの経験でも構いません。今回建設業許可を申請する会社の経験である必要はなく、前職や前々職の経験でも問題ありません。
また、1社だけでの経験である必要はなく、複数の会社での経験を通算して10年(もしくは3年や5年)あれば良いのです。

実務経験は、以下の2つを同時に満たす期間となります。

  • 許可を受けようとする建設業種が行われていたか
  • 上記の期間にその会社に在籍していたか
許可を受けようとする建設業種が行われていたか
この点については、その業種の建設業許可を持っていたかどうかで分かれます。

  • 建設業許可を持っていた場合
  • 建設業許可を持っていた場合は、その会社の建設業許可通知書や決算変更届のコピーを提出することで、許可が有効であった期間について実務経験の証明となります。

  • 建設業許可を持っていなかった場合
  • 建設業許可を持っていない会社での経験を実務経験とする場合は、その会社で行った建設工事の書類(契約書もしくは注文書、もしくは請求書と入金が確認できるもの)を提出する必要があります。地域によって必要となる件数は異なります。簡単な地域だと、年間1件あればその1年間の実務経験が認められますが、厳しい地域だと、月1件必要となる場合もあります。

建設業種が行われていた期間に会社に在籍していたか
会社に在籍していたかは、以下のいずれかを提出する必要があります。

  • 厚生年金加入期間証明書または被保険者記録照会回答票
  • 住民税特別徴収税額通知書のコピー(必要となる期間分)
  • 役員であった場合は決算書内の役員報酬明細(必要となる期間分)
  • 源泉徴収の領収書と、それに対する源泉徴収簿(必要となる期間分)

指導監督的経験の証明

以下の2つを同時に満たす期間となります。

  • 指導監督的実務経験証明書に記載した工事全てについての契約書、工事請書、注文書等のコピー
  • 指導監督的実務経験を証明しようとする期間にその会社に在籍していたか
  • 在籍していたことの証明は、実務経験に関するものと同じです。

営業所に専任となっていることの証明

基本的には経営業務の管理責任者の常勤性を証明するための資料と同じで、住民票と健康保険者証が必要となります。

住民票により、現住所と営業所が通える距離にあるのかを確認します。もし現住所が住民票と異なる場合には、現住所の賃貸借契約書や公共料金の領収書、通勤定期券などが必要となります。

健康保険者証は、社会健康保険証や国民健康保険証、後期高齢者医療被保険者証となります。そこに事業所名が記載されていなければ、追加で以下の資料が必要となります。

  • 健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書または健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得確認及び標準報酬決定通知書
  • 住民税特別徴収税額通知書(徴収義務者用)または住民税特別徴収切替申請書
  • 法人の場合は決算書内の役員報酬明細
  • 源泉徴収の領収書と、それに対する源泉徴収簿

2-5.実務経験の緩和措置

10年の実務経験については、その10年間は1業種のみの経験としか認められないのが原則となります。
実務経験のみで複数の業種において専任技術者となるためには、最低でも、10年 × 業種の数の期間が必要となります。

例:塗装工事の会社に勤務
塗装工事の経験が5年、防水工事の経験が5年ある場合 塗装工事も防水工事も単独で10年以上の実務経験が無いため、どちらの業種でも専任技術者になることができない
塗装工事と防水工事を兼業して10年の経験がある場合 塗装工事、防水工事どちらか一つの業種であれば専任技術者になることができる
塗装工事と防水工事を兼業して20年の経験がある場合 塗装工事、防水工事どちらの業種においても専任技術者になることができる

つまり、2つの業種において実務経験により専任技術者となるためには、最低でも20年の期間が必要となります。

しかし、技術的に関連した業種については、例外が認められています。
例外となるのは以下の11個のパターンとなります。

  • とび・土工工事の実務経験が8年を超え、かつ土木一式工事ととび・土工工事の実務経験を併せて12年以上有る場合
  • →とび・土工工事の専任技術者となることができる

  • しゅんせつ工事の実務経験が8年を超え、かつ土木一式工事としゅんせつ工事の実務経験を併せて12年以上有る場合
  • →しゅんせつ工事の専任技術者となることができる

  • 水道施設工事の実務経験が8年を超え、かつ土木一式工事と水道施設工事の実務経験を併せて12年以上有る場合
  • →水道施設工事の専任技術者となることができる

  • 大工工事の実務経験が8年を超え、かつ建築一式工事と大工工事の実務経験を併せて12年以上有る場合
  • →大工工事の専任技術者となることができる

  • 大工工事の実務経験が8年を超え、かつ内装仕上工事と大工工事の実務経験を併せて12年以上有る場合
  • →大工工事の専任技術者となることができる

  • 内装仕上工事の実務経験が8年を超え、かつ建築一式工事と内装仕上工事の実務経験を併せて12年以上有る場合
  • →内装仕上工事の専任技術者となることができる

  • 内装仕上工事の実務経験が8年を超え、かつ大工工事と内装仕上工事の実務経験を併せて12年以上有る場合
  • →内装仕上工事の専任技術者となることができる

  • 屋根工事の実務経験が8年を超え、かつ建築一式工事と屋根工事の実務経験を併せて12年以上有る場合
  • →屋根工事の専任技術者となることができる

  • ガラス工事の実務経験が8年を超え、かつ建築一式工事とガラス工事の実務経験を併せて12年以上有る場合
  • →ガラス工事の専任技術者となることができる

  • 防水工事の実務経験が8年を超え、かつ建築一式工事と防水工事の実務経験を併せて12年以上有る場合
  • →防水工事の専任技術者となることができる

  • 熱絶縁工事の実務経験が8年を超え、かつ建築一式工事と熱絶縁工事の実務経験を併せて12年以上有る場合
  • →熱絶縁工事の専任技術者となることができる

まとめ

建設業許可を取得、維持するために必要な専任技術者について説明いたしました。

専任技術者になるための要件は、建設業許可の種類(一般か特定か)、建設業の業種によって異なります。
そして、専任技術者となる人は営業所に常勤となっていなければなりません。

要件は、指定の資格があるか、実務経験が一定の年数以上あるかによって判断されます。
そして、要件を満たしていることは、資料を用意して証明しなければなりません。

実務経験を証明するためには多くの資料を用意しなければならないため、できることなら、資格により専任技術者の要件を満たした方が良いでしょう。

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