建設業許可は取得して終わりではありません。
許可を維持するためには、5年ごとに更新の手続きを行わなくてはなりません。
そして更新を行うためには、毎年決算届を提出し、会社情報に変更があれば変更届も提出しなければなりません。
しかし、建設業許可を取得してから、こうした手続きを行わずに放置しているお客様も多いのではないでしょうか?
行政から更新の案内ハガキが届いて、慌てて許可の更新について調べる方もいるかと思います。
「初めての更新となるが何から手をつければ良いのかわからない」
そんなお客様のために、まず始めに抑えておくべき事項を5つにまとめました。
是非参考にしてください!
目次
1.建設業許可の有効期間
2.建設業許可が更新できる条件
3.更新申請の必要書類
4.建設業許可を更新する際の費用
5.更新申請が間に合わなかった場合に問題となること
1.建設業許可の有効期間
建設業許可の有効期間は、許可取得から5年間です。
そのため有効期間が過ぎる前に、更新の手続きを行わなければなりません。
有効期間は、許可取得日から5年後の許可取得日と同じ日付の前日までとなります。
例えば平成22年4月1日が許可取得日だとすると、5年後の4月1日の前日となる平成27年3月31日までが有効期間となります。
許可取得日がわからない場合でも、建設業許可を取得した際に行政から送られてきた許可通知書に有効期間が書いてあります。また業者票にも有効期間が書いてあるはずです。
有効期間の最後の日が休日・祝日で行政機関が休みとなる場合でも、有効期間に変わりはありません。
1-1.更新申請の期限
通常、更新申請は、有効期間の最後の日から30日前までに申請することが求められています。
これは、更新の審査期間が30日程度かかり、有効期間の満了日までに新たな許可通知書を取得できるようにするためです。
1-2.有効期間の30日前を過ぎてしまったら
もし30日前を過ぎてしまったとしても、更新の申請は行えます。
ただし、必ず許可の有効期間内に申請しなければなりません。有効期間が1日でも過ぎると、更新申請を受け付けてもらえません。有効期間の最終日が行政機関の休みとなる場合は、その前の営業日が最終的な申請期限となります。
30日前を過ぎても申請ができるからといって、30日前を過ぎても問題無いという意味ではありません。
地域によっては30日前を過ぎると始末書などの追加書類を求められ、余分な手間がかかります。余程の理由が無い限り、30日前までに申請するようにしてください。
1-3.更新の審査期間中でも許可は有効です
30日前を過ぎてから更新申請を行うと、審査の間に従前の許可の有効期間が過ぎてしまいます。この場合でも従前の許可の効力が切れてしまうわけではなく、更新申請の審査が終了するまでは、一応有効として扱われます。そして更新審査が通り新たな許可が発行された場合は、従前の許可の有効期間終了の翌日から、新たな許可の有効期間がスタートとなります。
2.建設業許可が更新できる条件
建設業許可を更新するためには、いくつかの条件をクリアしていなければいけません。
基本的には建設業許可の新規申請時と同じ条件ですが、更新時に特有の注意点があります。
2-1.必要となる事業年度分、決算届を提出していること
建設業許可を取得すると、毎年決算の内容を届け出る義務が発生します。
この決算届の提出が1年でも欠けると更新申請を受け付けてもらえません。
決算届は、事業年度終了後4ヶ月以内に提出しなければなりません。
例えば、事業年度が4月1日から3月31日の会社が、平成22年5月1日に許可を受けた場合、
5年後の平成27年4月30日までに更新申請が必要ですが、その時には以下の5年度分の決算届を提出していなければなりません。
- 平成21年4月1日から平成22年3月31日の決算届
- 平成22年4月1日から平成23年3月31日の決算届
- 平成23年4月1日から平成24年3月31日の決算届
- 平成24年4月1日から平成25年3月31日の決算届
- 平成25年4月1日から平成26年3月31日の決算届
※平成26年4月1日から平成27年3月31日の事業年度分については、更新申請のタイミングでは事業年度終了から4ヶ月が経っておらず、提出の義務はありません。
2-2.重要事項に変更があった場合、変更届を提出していること
建設業許可を取得した業者は、重要事項に変更があった場合、その変更届を提出しなければいけません。
こちらも提出が欠けていると更新申請を受け付けてもらえません。
重要事項とは、以下の事項となります。
変更後30日以内に提出が必要
- 商号
- 営業所に関する情報
- 資本金の額
- 役員に関する情報
- 支配人に関する情報
変更後2週間以内に提出が必要
- 経営業務の管理責任者に関する情報
- 専任技術者に関する情報
- 令3条の使用人に関する情報
事業年度終了後4ヶ月以内に提出が必要
- 監理技術者に関する情報
申請順序
決算届や変更届が未提出の場合には、まずそれらの提出を先に行います。
決算届、変更届ともに提出期限が定められていますが、それを過ぎたとしても提出することはできます。(地域によっては始末書などの追加書類を求められる場合があります。)
2-3.経管、専技が常勤で勤務しているか
経営業務の管理責任者・専任技術者は、建設業許可の重要な要件です。
そのため更新の審査においても、経管・専技がちゃんと常勤として勤務しているかがチェックされます。
具体的には、社会保険証のコピーを提出することで常勤であることを証明します。
(社会保険に加入していることで継続的に勤務していると見なされるからです。)
もし社会保険に未加入の場合は、住民税の特別徴収税額通知書や、確定申告書、源泉徴収の領収書など、公的な書類により給料を支給している実態を証明することで、常勤であると見なされます。
2-4.社会保険に加入しているか
現時点(平成27年4月)では、建設業許可更新の条件ではありませんが、社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険)の加入状況もチェックされます。
平成29年度までに建設業許可業者の全てが社会保険に加入するよう、取り締まりが強化されています。そのため、近いうちに社会保険の加入が許可更新の条件となる可能性も十分にあり得ます。
また、更新の条件にはなっていないものの、社会保険未加入の場合には、許可行政庁から加入を指導されます。それでも加入しない場合は保険を管轄する年金機構や労働局へ通報され、いずれは強制加入や保険料の強制徴収となる場合があります。
3.更新申請の必要書類
知事許可を更新する際に、一般的に必要となる書類は以下となります。
地域により必要書類は異なりますので、必ず申請前には管轄機関にてご確認ください。
3-1.必ず提出が必要な書類
- 様式第一号 建設業許可申請書
- 別紙一 役員等の一覧表
- 別紙二(2) 営業所一覧表(更新)
- 別紙四 専任技術者一覧表
- 様式第四号 使用人数
- 様式第六号 誓約書
- 様式第二十号 営業の沿革
- 様式第二十号の二 所属建設業者団体
- 様式第二十号の三 健康保険等の加入状況
- 様式第二十号の四 主要取引金融機関名
- 様式第七号 経営業務の管理責任者証明書
- 別紙 経営業務の管理責任者の略歴書
- 様式第十二号 許可申請者の住所、生年月日等に関する調書
- 様式第十四号 株主(出資者)調書※法人のみ
- 経営業務の管理責任者の確認資料※社会保険証のコピー等
- 専任技術者の確認資料※社会保険証のコピー等※
- 営業所の確認資料
※営業所付近の地図、営業所の内外観の写真、建物の登記簿謄本や賃貸借契約書のコピー等 - 健康保険・厚生年金・雇用保険の加入を証明する資料
※健康保険や厚生年金保険の加入の確認資料として、健康保険及び厚生年金保険の保険料の納入に係わる領収証書もしくは健康保険及び厚生年金保険の納入証明書
※雇用保険の加入の確認資料として、労働保険概算、確定保険料申告書のコピー及びこれにより申告した保険料の納入に係わる領収済み通知書
以下、行政機関で取得
- 登記されていないことの証明書(成年被後見人・被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書)
※役員、相談役、顧問、個人事業主、使用人について必要 - 身分証明書(破産者で復権を得ないもの等に該当しない旨の区市町村長の証明書)
※役員、相談役、顧問、個人事業主、使用人について必要 - 登記事項証明書
- 住民票
※経管、専技、令3条使用人について必要
3-2.状況に応じて提出が必要な書類
- 様式第十一号 建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表
※支配人もしくは従たる営業所を置いた場合に必要 - 様式第九号 実務経験証明書
※専任技術者が実務経験者の場合に必要 - 様式第十号 指導監督的実務経験証明書
※特定建設業許可の場合に必要 - 監理技術者資格者証コピー
※特定建設業許可の場合に必要 - 様式第十三号 建設業法施行令第3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書
※支配人もしくは従たる営業所を置いた場合に必要 - 建設業法施行令第3条に規定する使用人の確認資料(社会保険証のコピー等)
※従たる営業所を置いた場合に必要
以下、行政機関で取得
- 印鑑証明書
※経管、専技の経験を自己証明する場合に必要
3-3.前回提出時から変更があった場合に提出が必要な書類
- 定款※法人のみ
- 修業(卒業)証明書
※専任技術者が実務経験者で、学歴により経験年数を短縮した場合は必要 - 資格認定証明書写し
※専任技術者が国家資格者の場合に必要
4.建設業許可を更新する際の費用
4-1.国に納める法定費用
知事許可、大臣許可ともに5万円です。
ただし、一般建設業の許可と特定建設業の許可は別々にカウントします。
例えば、知事許可で建築一式は特定建設業の許可、大工工事は一般建設業の許可となるような場合、
5万円+5万円=10万円が国に納める法定費用となります。
4-2.行政書士に代行した場合の費用
大抵のお客様が更新申請を行政書士に任せると思いますが、行政書士の報酬の相場は以下となります。
6万円程度が相場ですので、それよりも明らかに高い場合は行政書士を見直した方が良いかもしれません。
※平成27年4月時点で、インターネットで「建設業許可申請」などのキーワードで検索して上位に表示される行政書士26社の費用をまとめました。
事務所 | 地域 | 新規 | 決算 | 更新 |
---|---|---|---|---|
A | 東京都 | 99,800 | 31,500 | 52,500 |
B | 東京都 | 140,400 | 32,400 | 54,000 |
C | 東京都 | 89,800 | 25,000 | 50,000 |
D | 東京都 | 84,000 | 21,600 | 29,400 |
E | 東京都 | 162,000 | 31,500 | 86,400 |
F | 東京都 | 300,000 | 85,000 | 100,000 |
G | 東京都 | 108,000 | 43,200 | 54,000 |
H | 神奈川県 | 105,000 | – | 39,800 |
I | 神奈川県 | 99,800 | 30,000 | 59,800 |
J | 神奈川県 | 162,000 | 43,200 | 86,400 |
K | 神奈川県 | 140,000 | 35,000 | 80,000 |
L | 神奈川県 | 140,400 | 32,400 | 75,600 |
M | 埼玉県 | 85,000 | 32,400 | 52,000 |
N | 埼玉県 | 162,000 | – | 54,000 |
O | 埼玉県 | 130,000 | 30,000 | 50,000 |
P | 埼玉県 | 120,000 | 40,000 | 60,000 |
Q | 千葉県 | 120,000 | 40,000 | 70,000 |
R | 千葉県 | 189,000 | – | – |
S | 千葉県 | 129,600 | 27,000 | 64,800 |
T | 千葉県 | 107,784 | 32,400 | 64,800 |
U | 大阪府 | 140,000 | 30,000 | 70,000 |
V | 大阪府 | 100,000 | 30,000 | 50,000 |
W | 大阪府 | 160,000 | 30,000 | 60,000 |
X | 福岡県 | 130,000 | 30,000 | 70,000 |
Y | 福岡県 | 129,600 | 43,200 | 90,720 |
Z | 福岡県 | 140,400 | 32,400 | 75,600 |
平均 | 133,638 | 35,139 | 63,993 |
5.更新申請が間に合わなかった場合に問題となること
もし許可の有効期間内に更新申請が間に合わなかった場合は、新たに建設業許可を取り直すことになります。しかし許可の取り直しになると、以下のような問題が考えられます。
5-1.費用がかさむ
更新申請の際は、国に納める法定費用は知事許可・大臣許可問わず5万円でしたが、新規申請となると、知事許可9万円、大臣許可15万円となります。
また、行政書士の代行費用としても、更新時は6万円程度でしたが、新規申請となると13万円程度が相場となります。
このように、新規申請は更新と比べて費用が余分にかかってしまいます。
5-2.財産要件を満たさなければならない
一般建設業の財産要件として、500万円以上の預金残高があること、もしくは決算書の貸借対照表の純資産の合計が500万円以上であることが必要でした。
更新申請においてはこの財産要件の確認は行われません。
(毎年の決算届がその代わりとなっています。)
しかし新規申請となると再度財産要件を満たしていることを証明しなければなりません。
経営の悪化などで500万円以上の預金残高や純資産が無い場合には、建設業許可が取得できなくなってしまいます。
※特定建設業の許可においては、更新申請の際にも財産要件を満たしているかチェックされます。
まとめ
建設業許可は5年が有効期間となり、有効期間が切れるまでに更新申請を行わなければなりません。
通常は有効期間が切れる30日前までに更新申請を行います。
更新の前に決算届や変更届を提出していない、更新申請を受け付けてもらえません。
更新の審査においては、経管や専技が常勤で勤務していること、社会保険の加入有無が主なチェックポントとなります。
更新の費用として、国に納める費用は5万円、行政書士の費用は6万円程度となります。
更新申請が間に合わないと、許可が失効となり、新たに取り直さなければなりません。
新規取得となると余分に費用がかかり、財産要件を再度証明しなければなりません。