このページを見ていただいているということは、きっと、何かしらの理由で建設業許可の取得を検討されているのではないでしょうか?また、調べ始めたばかりで、詳しい知識をお持ちでない方が多いのではないでしょか?
建設業許可は、一定の要件を満たし、必要な書類を用意すれば、誰でも取得することができます。ただ、要件は細かく定められているため、全ての要件をクリアしているかの確実な判断は、簡単にはできません。
しかし、要件の中で、特に重要なものは3つだけです。この3つのどれかがクリアできないため、許可を断念する方が非常に多いです。
そこで、このページでは、この3つの要件をクリアしているかの大方の判断をしていただき、建設業許可が取得できるか否かの目星を付けていただければと思います。
1.必要な建設業許可の種類をはっきりさせる
まず始めに、今回取得したい建設業許可の種類をはっきりさせましょう。というのも、建設業許可には複数の種類があり、それぞれの許可に応じて必要となる要件が異なるからです。
建設業許可の種類は、営む建設業の業種、営業所の所在地、下請けに出す工事の金額により分類されます。
1-1.営む建設業の業種がどれに当てはまるのか
建設業許可は、営む建設業の業種ごとに必要となります。業種は以下の28個に分れますので、ご自身が営む建設業がどの業種に該当するのか確認してください。
一式工事 | 土木工事業 | 建築工事業 | |
---|---|---|---|
専門工事 | 大工工事業 | 左官工事業 | とび・土工工事業 |
石工事業 | 屋根工事業 | 電気工事業 | |
管工事業 | タイル・レンガ工事業 | 鋼構造物工事業 | |
鉄筋工事業 | 舗装工事業 | しゅんせつ工事業 | |
板金工事業 | ガラス工事業 | 塗装工事業 | |
防水工事業 | 内装仕上工事業 | 機械器具設置工事業 | |
熱絶縁工事業 | 電気通信工事業 | 造園工事業 | |
さく井工事業 | 建具工事業 | 水道施設工事業 | |
消防施設工事業 | 清掃施設工事業 |
※建設業の業種について詳しくは建設業28業種を詳しく解説!これを見れば必要な業種がわかりますをご覧ください。
本当に建設業許可が必要なのか?
建設業許可は、1件あたりの請負金額が税込で、建築一式工事は1500万円以上、それ以外の工事は500万円以上の場合に必要となります。この金額を下回る工事しか行わない場合は、建設業許可は必要ありません。もちろん許可を取得しても問題はありません。
1-2.建設業を営む営業所の所在地はどこにあるのか
営業所の所在地に応じて、必要となる許可の種類が異なります。
営業所とは、建設業に関する見積りや契約締結等の業務を行う場所のことです。よって、登記上の本店や支店、事務所があったとしても、建設業に関する業務を行わない場合は営業所には含まれません。
営業所の所在地が一つの都道府県におさまる場合は知事許可
営業所が1カ所のみ、もしくは複数の営業所があったとしてもその全てが一つの都道府県内におさまる場合は、営業所がある都道府県の知事許可が必要となります。
営業所の所在地が複数の都道府県にまたがる場合は大臣許可
営業所が複数あり、それらの所在地が複数の都道府県にまたがる場合は、大臣許可が必要となります。
具体例 | 必要な許可 |
---|---|
東京都にのみ営業所がある | 東京都知事許可 |
神奈川県横浜市と神奈川県小田原市に営業所がある | 神奈川県知事許可 |
東京都と神奈川県に営業所がある | 大臣許可 |
1-3.下請けに出す工事の金額はいくらか
元請工事を下請けに出す際、その金額によって必要となる許可の種類が異なります。
重要なので繰り返しますが、「元請工事を下請けに出す」場合の判断となります。「下請けで請けた工事をさらに下請け(孫請け)に出す」場合には、金額の制限がありません。
元請けの工事を下請けに出す場合に、ある一定の金額を超える場合には特定建設業と呼ばれ、特定建設業許可が必要となります。一定の金額を超えない場合は、一般建設業許可となります。
下請けに出す金額が3000万円未満の場合は一般建設業許可
元請工事を下請けに出す場合に、その金額が税込で3000万円未満となる場合は、一般建設業許可と呼ばれるものになります。建築一式工事の場合は、金額の上限が税込で4500万円未満となります。
下請けに出す金額が3000万円以上の場合は特定建設業許可
元請けで請けた工事を下請けに出す場合に、その金額が税込で3000万円以上となる場合は、特定建設業許可と呼ばれるものになります。建築一式工事の場合は、4500万円以上となります。
1-4.必要な建設業許可の種類はわかりましたか?
上記のように建設業許可は、営む建設業の業種、営業所の所在地(知事か大臣)、下請けに出す工事の金額(一般か特定)に分類されます。
つまり、建設業許可は、大きく分けると4つに分類されます。
○○工事(営む建設業の業種)において、
- 知事許可の一般
- 知事許可の特定
- 大臣許可の一般
- 大臣許可の特定
のどれかが必要となります。
これより下では、建設業許可を取得される方の大多数を占める知事許可の一般を例として、詳しく説明していきます。また、わかりやすくするために、A株式会社が、○○工事業の許可取得を希望していると仮定して説明していきます。A株式会社はご自身の会社名に、○○工事業はご自身が営む建設業種に置き換えてお考えください。
特定許可については、特定建設業にて、大臣許可については、大臣許可にて、詳しく説明しております。
2.建設業許可を取るための重要な3つの要件
建設業許可をとるためには大きなハードルが3つあります。
簡単に言うと、経営経験が十分にあるか、技術者としての経験が十分にあるか、お金が十分にあるか、の3つとなります。この3つがクリアできれば、許可取得は目前となります。
2-1.経営者として十分な経験があるか
A社に常勤で勤務し、登記されている(登記簿謄本に名前が載っている)役員の中に、○○工事業についての経営者としての経験が5年以上ある方が必要となります。もしくは、○○工事業以外の建設業種についての経営者としての経験が7年以上ある方が必要となります。
申請者が会社ではなく個人事業主の場合は、事業主本人に5年もしくは7年以上の経営者としての経験が必要となります。
この要件を、経営業務の管理責任者の要件と言います。
経営者としての経験とは
経営者としての経験があるかどうかの判断は、建設業を営む会社の登記された役員となっていたこと、もしくは建設業を営む個人事業主であったことにより判断します。
また、経営者としての経験は、1社単独での経験である必要はなく、複数の経験を合算させることができます。つまり、A社だけではなく、前職や前々職の経験でも問題ありません。
以下のような人であれば、経営業務の管理責任者の要件をクリアしていると言えます。
ケース | 可否 |
---|---|
例① 過去に○○工事業について個人事業主として5年以上の経験がある | ○ |
例② 過去に○○工事業以外の建設業種について個人事業主として7年以上の経験がある | ○ |
例③ 過去に○○工事業以外の建設業種について個人事業主として7年未満の経験がある | × |
例④ A社で5年以上○○工事業を行っており、かつその期間に役員となっている | ○ |
例⑤ 前職の会社で5年以上○○工事業を行っており、かつその期間に役員となっていた | ○ |
経営業務の管理責任者の要件を満たしているかの最終的な判断は、登記簿謄本や社会保険証のコピー、工事の注文書など、書面を提示しての判断となります。さらに、管轄となる地域によっても異なります。
より詳しくは、経営業務の管理責任者にて説明しておりますので、参考にしてください。
2-2.技術者として十分な経験があるか
この技術者としての経験は、A社の従業員(役員でも可)の中で、○○工事業の対象となる国家資格者がいること、もしくは○○工事業についての実務経験が10年以上あることでクリアとなります。
この要件を、専任技術者の要件と言います。
要件を詳しく説明すると長くなってしまうため、より詳しい説明をお求めの方は専任技術者をご覧ください。
専任技術者の要件を満たす国家資格について
建設業の業種ごとに専任技術者となるために必要な国家資格は異なります。一例として、土木工事業、建築工事業、大工工事業において要件を満たす国家資格は以下となります。
土木工事業における専任技術者となるための国家資格 | |
---|---|
一級建設機械施工技士 | 二級建設機械施工技士(第一種~第六種) |
一級土木施工管理技士 | 二級土木施工管理技士(土木) |
総合技術監理(建設) | 総合技術監理(建設「鋼構造及びコンクリート」) |
総合技術監理(農業「農業土木」) | 総合技術監理(水産「水産土木」) |
総合技術監理(森林「森林土木」) | |
建築工事業における専任技術者となるための国家資格 | |
一級建築施工管理技士 | 二級建築施工管理技士(建築) |
一級建築士 | 二級建築士 |
大工工事業における専任技術者となるための国家資格 | |
一級建築施工管理技士 | 二級建築施工管理技士(躯体) |
二級建築施工管理技士(仕上げ) | 一級建築士 |
二級建築士 | 木造建築士 |
技能検定 建築大工 |
専任技術者の要件を満たす実務経験について
実務経験があるかどうかは、上述の経営業務の管理責任者の経営経験があるかと同じような考え方となります。つまり、以下のような人であれば、専任技術者の要件をクリアしていると言えます。
ケース | 可否 |
---|---|
例① 過去に○○工事業について個人事業主として10年以上の経験がある | ○ |
例② 過去に○○工事業について個人事業主として7年の経験がある | × |
例③ A社で10年以上○○工事業を行っており、かつその期間、従業員となっている | ○ |
例④ 前職の会社が10年以上○○工事業を行っており、かつその期間、従業員となっていた | ○ |
例⑤ 前職の会社が10年以上○○工事業を行っているが、従業員として在籍していた期間は7年のみ | × |
2-3.お金が十分にあるか
一般の建設業許可を取るためには、500万円以上のお金があることを証明する必要があります。
この要件を、財産要件と言います。
お金があることの証明の方法
証明方法としては、主に以下の2つのどちらかとなります。
- A社名義の銀行口座の中に、残高が500万円以上ある状態で銀行から残高証明を発行してもらう
- A社の直近の決算書において、貸借対照表の純資産の総額が500万円以上あること
申請者が会社ではなく個人事業主の場合は、②の方法は使えないので、①の方法のみとなります。
3.その他の要件について
建設業許可を取るためには、上記3つの要件以外にも「誠実性」、「欠格要件」という要件があります。当然、必要な要件なのですが、普通に事業を行っている人は満たしていると思われますので、簡単に説明いたします。
誠実性とは
請負契約に関して不正な行為や不誠実な行為をする恐れがないことを言います。
不正な行為とは契約の締結、履行において詐欺、脅迫、横領などの法律違反となる行為を指します。
不誠実な行為とは工事の内容や工期などが契約に違反する行為を指します。
過去に不正な行為や不誠実な行為をしていたり、暴力団の構成員であるなどの場合は、誠実性に欠けるとして建設業許可を取得することができません。
欠格要件とは
過去、不正が原因で建設業許可の取り消しを受けたり、営業停止、禁錮以上の刑、法律違反を犯すなどして一定の期間が経過していない場合には、建設業許可を取得することができません。
まとめ
これまで、建設業許可の要件を説明していきました。
- 要件① 経営経験が5年もしくは7年以上ある人が役員にいるか
- 要件② 国家資格者もしくは実務経験が10年以上ある人が従業員にいるか
- 要件③ 500万円以上のお金があるか
- 要件④ 誠実性があるか
- 要件⑤ 欠格要件に該当しないか
この中で特に重要なのが、①、②、③となります。
この3つにより建設業許可の取得ができないといった方が非常に多いです。
逆にこの3つをクリアしていれば、許可取得の見込は高いと思われます。
要件を満たしている方は、続いて初めて建設業許可を申請する人が必要となる書類のまとめをご覧いただき、申請準備を進めていただければと思います。
もし要件を満たしていない場合でも、まだ諦めるのは早いです!
要件を満たしていない場合の対応策を、○○○にまとめましたので、こちらもお読みください。